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秋茄子はうめぇ

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お役所勤めだった父が退職前のこと。「若いもんが入ってきて、もうやりますからいいですゆうて、わしゃー仕事をさせてもらえんのじゃ」とよく嘆いていた。
そして、暇に任せて新聞を熟読していたようで、母が”この頃、じいさんが料理にまで口を出すようになった”とよく文句を言っていた。
ある日、ナスの水漬けを自ら作った。
新聞家庭欄で仕入れた情報なので切り抜くだとか、コピーは憚られたのか律儀にメモしている。
塩でもんで水を入れて・・・こうやってぎゅうっと絞るんじゃ・・・秋茄子はうめぇぞ
ごくりとのどを鳴らすのが聞こえたようだった。味はいまいちだったようでそれ以降は、レシピを見てまでつくる姿は見たことはない。

それから20年以上経って、80をいくつか過ぎたころから、父は何も欲しなくなった。舌や歯や、いろんなところの感覚が鈍ってきて思うような味を感じられなくなったのだと思う。そして、味を想像することもやめ、最後には「○○がうめえぞ」ということもなくなっていった。

今度、中華が食べたいから岡山に行く、やっぱり千屋牛じゃ と、その味を舌に載せる感覚や味を思い、それで一杯やる ― 呑むばかりでほとんど食べなくても、父に「とって至福のときだったと思う。

この季節になると「黒頭巾(黒豆の枝豆)は薄皮を剥いて食うんじゃ」 「芋汁はうめぇぞ」「芋煮がええなぁ」という父の声が聞こえてくる。
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映画館にて | Home | 夏の終わり

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